工場の屋根上に設置された太陽電池が、太陽電池の生産に必要な電力の大部分を供給している。
大企業の中で、太陽電池への投資は有望だと考え始めたところがある・ブリティッシュ・ペトロリアムやシェルのような大手石油会社が、太陽発電への投資という大きな一歩を踏み出したことは先に述べた。
アメリカの大手天然ガス会社のエンロンもそうである。
エンロンは石油会社のアムコと合弁事業を行い、太陽電池の生産に多大な投資を行っている。
アメリカ最大の風力発電会社ゾンドとアメリカ第二の太陽電池メーカーのソーラレックスを買収して、再生可能エネルギーの分野に大きく踏み出したエンロンは、自社を「化石燃料エネルギー時代から太陽エネルギー時代への移行の中心」に位置づけている。
太陽や風力の場合、供給が断続的になってしまうという問題がついてまわるが、地熱エネルギーや水力発電などの再生可能エネルギー源なら、そのような問題は一切なく、間断なく利用できる。
日本にとって非常に有望なエネルギー源の一つが、地熱エネルギーだ。
地熱エネルギーは太陽に由来しない、極めてユニークなエネルギー源である。
日本のように地熱に恵まれた国では、豊富なエネルギーが地表のすぐ近くに存在している。
日本中に何千もの温泉があることを考えれば、このエネルギー源がどれほど豊富に地表近くにあるかがわかるだろう。
問題は、この大きな地熱エネルギーをどのように環境を破壊せずに利用できるか、である。
地熱は直接利用することもできるし、産業プロセスの中に取り込むこともできる。
また、地熱で蒸気を発生させ、タービンを回して発電を行うこともできる。
難しいのは、それを持続可能なやり方で行うことだ。
つまり、基本的な流れとしては、地下から高温のお湯を組み上げてその熱を取り出し、水はもとの帯水層に戻してやらなくてはならない。
この閉鎖循環システムでは、水中のすべての鉱物や塩分をもとの地下へ返してやることになる。
地熱は、重力の圧力と地球の奥深くの放射能から発生する。
おそらく永久に絶えることのない熱源だ。
地熱エネルギーを最初に利用したのは、一九○四年、イタリアでのことだ。
今では世界の二○を超える国々で、地熱エネルギーが使用されている。
たとえば、カリフォルニアの間欠泉地帯では、ボーリングをすることにより、穴から大量の高熱蒸気を地表に吹き出させてタービンを回し、発電ができる。
地熱エネルギー源を積極的に利用しようとしている国々では、ニカラグアがニ八%、フィリピンがニ六%と、電力の少なからぬ部分をすでに地熱エネルギーから得ている。
一九九六年には、地熱発電容量は世界全体で、約七、ニ○○メガワットとなった。
しかし、このような国は例外的存在であり、世界的に見れば、このエネルギー源はほとんど利用されていないのが実状だ。
日本にも国内の地熱を利用すれば、現在日本にある原子力発電所の発電量の二倍以上を発電できると推定されているほど、豊かな地熱エネルギーが眠っている。
未来のエネルギー経済の姿今日の化石燃料を中心とした経済に代わって、「太陽/水素エネルギー経済」が大きく発展するかどうかの鍵は、安価な電力で水の電気分解が経済的に行えるようになるかどうかにかかっている。
水の分子は、電気分解されると水素と酸素になり、この水素は燃料として利用できる。
水素は最もシンプルな燃料であり、石炭や石油と違って炭素を排出しない。
風力や太陽、地熱エネルギーで発電をし、低コストでの水素生成が可能になれば、今日の天然ガスとほとんど同じやり方で水素を利用できるようになる。
つまり、水素という形態で、様々な再生可能エネルギーを貯蔵・輸送できるようになるのである。
年に約一%程度しか伸びていない石炭や石油とは対照的に、地熱の利用は年に三%以上の勢いで増えている。
環太平洋地帯や地中海を取り囲む国々、アフリカのグレイトリフト(世界最大の地溝帯)沿いの国々など、地熱に恵まれた国では、地熱エネルギーは豊かなエネルギー源になりうる。
しかも炭素排出の心配は皆無なのである。
石炭の次に石油が主流になったように、石油に取って代わる次の主要燃料は水素である、というのがワールドウォッチ研究所の見方である。
水素なら貯蔵もでき、必要なときに使えるので、風力発電と太陽発電を柱とするエネルギー経済を完璧にサポートできる。
たとえば、マツダやメルセデスなどの自動車メーカーでは、すでに水素エンジンを用いる自動車のプロトタイプを開発している。
水素を車のエンジンで燃やすと、酸素と結合して水蒸気となる。
副産物として排出されるのは無害の水蒸気だけである。
この汚染ゼロのエネルギー源が開発されれば、われわれが現在直面しているエネルギー問題のほとんどは、早晩解決できるだろう。
コンピュータの電源であれ、車の燃料であれ、製鉄であれ、近代経済に必要なあらゆる形態のエネルギーを、電力と水素を組み合わせることで提供することができる。
それでは、風力や太陽、水素発電を中核とするエネルギー経済とは、どのようなものになるのだろうか?まず、ほとんど「目につかない」ことが特徴だ。
太陽発電用の屋根材は、通常の屋根材とほとんど区別がつかないし、水素を送るパイプラインも、現在の天然ガス用パイプラインと同様に地下に埋設されるだろう。
今日デンマークやオランダ、ドイシ北部で見られるように、郊外の地域に風力タービンが点在する風景も見られるだろうが、大規模風力発電所や太陽発電所は、ほとんどが人里離れた場所や砂漠、海外線に沿って設置されるだろう。
そんなエネルギーシステムはロマンチックな夢物語に過ぎない、と思うかもしれない。
でも考えてみてほしい。
二○年前にデスクトップやラップトップのコンピュータ、あるいはインターネットによるコミュニケーションの話を聞いたら?そんなことはロマンチックな夢物語に過ぎない、と思ったに違いない。
今日は情報化時代だといわれる。
最先端の情報化経済の時代の原動力として、工業時代そのままの原始的なエネルギーシステムを使わなくてはならないとしたら、それこそおかしなことではないか。
企業や政府の意思決定者たちが、エネルギー経済のリストラがどれほど重要であるか、そして炭素を出さないゼロ.エミッションのエネルギーシステムがどれほど経済的かつ実用的でありうるかを理解し始めれば、一○○年前に〃最初のエネルギー革命″を行ったときと同じように奮い立って着手するだろう。
化石燃料を中心とした経済から、太陽/水素を電力源とする効率のよい経済へ移行していく中で、世界中に膨大な投資と雇用の機会が生まれる。
このエネルギー経済の移行はいずれ起こるかもしれないというようなものではない。
もうすでに起こりつつあるのだ。
問題は、エネルギー革命のあるやなしやではない。
どのくらいのスピードで展開するか環境を破壊しない持続可能な経済システムを構築しようとするなら、現在の使い捨て経済を、資源を減らしリサイクルする経済に変えていくことも、重要なステップの一つである。
高度な技術、多くの場合は化石燃料を原動力とする近代社会の様々な機械は、年々以前よりも多くの原材料を地球から取り出すことを可能にした。
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